絁(あしぎぬ・あしきぬ)
非常に問題の多い漢字と読みです。wikipedia「あしぎぬ」も参照して下さい。
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出典不明のコピー紙です。→調べておきます。正倉院宝物関連の書物だと思います。
絁についての、日本史学の現状がよくわかる文章です。かなりの名文。以下引用。
あしぎぬ 絁
平組織の絹織物(平絹:ひらぎぬ)の一種である。賦役令(ぶやくりょう)に「細きを絹、麁(あら)きを絁と為す(なす)」とある。
しかし、絹と絁との間の精粗の違いを厳密に区別することは難しい。
東大寺献物帳(けんもつちょう)の一つ国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)に絹と記されている袈裟(けさ)の裏の裂地(きれじ)と調銘に絁と記されている裂地との間に、あまり精粗の差はみられない。
むしろ、正倉院に残る十八ヵ国に上る多数の調絁(ちょうのあしぎぬ)を比較すると、産出国・郡・郷による調絁間の違いの方が大きい。
→綾については田上王(正倉院の宝物)で引用
以下「角川新字源(昭和六十年二三九版、昭和四十三年初版)」の解説です。
【絁】シ 意味 (形声。もと『糸璽』と書いた。音符、璽シ、または(絁の旁(つくり))シ)つむぎ。太くあらい糸で織った織物。
「あしぎぬ」という読みは記されていません。もとは『糸璽』とありますので、かなり古い漢字のようです。(※01)
ついでなので漢字「璽」を「角川新字源」から。
【璽】ジ シ なりたち 形声 玉と音符爾ジ(おしつける意→捏デツ)とから成り、玉製(ぎょくせい)の印の意を表す。
意味@しるし。印。おしで。 秦(しん)以降は特に天子(てんし)の印に限って璽を用いる。「玉璽(ぎょくじ)」
A封をする。
以上のことから漢字『糸璽』は、玉製印を押し付けた布を示す文字だったという可能性が考えられます。(※02)
貨幣(かへい)としての布を『糸璽』と書いたのでは?まあ、「幣(へい)」に布の意味がありますから容易に想像できるかと。
【幣】ヘイ なりたち 形声 巾(きん)と、音符敝(へい)(ささげる意→拝ハイ)とから成り、ささげ布、ひいて礼物(れいもつ)、
また礼物の帛(はく)・玉(はくぎょく)などの財物(ざいもつ)に代えて銭が用いられるようになったことから「ぜに」の意を表す。
意味@ぬさ。にぎて。みてぐら。神にささげる絹。みつぎもの。天子にたてまつる礼物。(※03)
Aひきでもの。客への贈り物。進物(しんもつ)。Bたから。財物。Cぜに「貨幣」
日本国での意味用法 ごへい。神をまつるときに用いる、白紙をきって柄にはさんだもの。「幣束(へいそく)」。(※04)
※01『糸璽』→甲骨文字以降の漢字を調べる必要あり。wikipedia「甲骨文字」。
※02『糸璽』→貨幣(かへい)として流通した布を調べる必要あり。
※03神にささげる絹→皇后陛下による養蚕(ようさん)。wikipedia「紅葉山御養蚕所」。
※04幣束→幣束の起源は蜘蛛(くも)の巣を掃う(はらう)ために発明されたものではないか?最初は竹笹(たけざさ)かな?
ついでに「巾(きん)」、「敝(へい)」、「帛(はく)」も示しておきます。
【巾】キン なりたち 象形(しょうけい)一端を帯にはさむようにしてある布きれの形にかたどり、手ふきの意を表す。
これを部首(ぶしゅ)にして、織物の性質・形などに関する字ができている。
意味@ふきん。てぬぐい。「手巾(読み方わかりません、てきん?しゅきん?)」Aおおい(おほひ)。かぶりもの。「頭巾(ずきん)」
BえりかけCおおう。かぶせる。「巾覆(読み方わかりません、きんぷく?)」Dおりもの。きれ。ぬの。
日本国での意味用法@はば。幅の略字Aちきり。むかしの婦人のかぶり物。
【敝】ヘイ 会意形声 支と、破れた布の意と音を示すヘイ(※05)とから成り、ぼろぼろにする意を表す。形声字の音符になると、
つぶれる(蹩ヘツ)、たおれる(斃ヘイ)、おおう(蔽ヘイ)などの意を表す。
意味@やぶれる(やぶる)㋐ぼろぼろになる㋑まける㋒おとろえるAつかれる。つかれさせる。Bおおう。おおい。C自分のことにつける謙称
【帛】ハク なりたち 会意形声 巾と白とにより、白い練り絹の意を表す。
意味@きぬ。しろぎぬ。絹織物。Aぬさ。贈り物の絹。「幣帛(へいはく)」
※
05ヘイ→「敝」の、向かって左の字
画像解説、蓬左文庫本続日本紀の養老五年正月記事中。
通常、「続日本紀」では「絁」とされている文字ですが、どう見ても「絶」ですね。
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八木書店「蓬左文庫本続日本紀」(ISBN:4-8406-2200-0)の養老五年正月記事コピー紙を撮影
画像、天平十七年「□□真玉」